「紙と電子書籍のどっちを買ったほうが良いのか?」は、たびたび議論が巻き起こる話題です。
どちらにもそれぞれの良さがあり、一概に「こちらを買うべきだ」と言えないのではと思うのが正直なところ。
私自身、最初は電子版を買って、気に入った作品は紙の本に切り替えたこともあれば、部屋のスペースの関係で、紙から電子に切り替えた作品もあります。
どちらも利用する身からすれば、紙と電子だと、どちらがより作品を応援するのにつながるのかは気になるのではないでしょうか。
そこで、編集者側、漫画家側のそれぞれの意見をご紹介。あくまで業界全体の総意ではなく、個人の意見だという点はご留意いただければと思います。
編集者の意見は
編集者側の意見として紹介したいのは『モブ子の恋』や『週末のワルキューレ』を担当する漫画編集者山中さん。
8月30日の以下のツイートをもとに、紙と電子についての議論が巻き起こり、炎上のような形に。
電子書籍より紙を買って貰えると嬉しいというお話。 pic.twitter.com/uEZiPzOYlK
— 漫画編集者山中@北斗ザコ①巻、終末のワルキューレ②巻どちらも重版! (@ComicYamanaka) August 30, 2018
「紙が売れないと次巻の部数が減る」のが主として、加えて以下の理由もあるそうです。
「電子は数字が固まるのが遅いので単行本の初速は紙で見る」とか「何十年もお世話になってきた書店さんたちをちょっと贔屓したい」
紙の本の売上が減り、電子の売上が伸びているなか「紙が重視されているけど、電子も反映されるような仕組みを整えていきます」という話ではなく「今こうだから紙を買ってね」と言われても、正直同意しがたい。
結局、電子で買っても紙が重視されてしまうのは残念だと、ツイートを見かけた当初は感じてしまいました。
※一連のツイートの後、先輩が電子書籍の良さについて語った後日談も紹介。
電子書籍と先輩の話。 pic.twitter.com/1vojjiVaKi
— 漫画編集者山中@北斗ザコ①巻、終末のワルキューレ②巻どちらも重版! (@ComicYamanaka) August 31, 2018
「紙と電子、どっちも違った良さがあるから 今でもこれだけ漫画が盛り上がっているんだ」
「連載を続けるかの指標は売り上げだけじゃない」 などの内容は、納得できるものが多くありました。
山中さんと先輩の話を踏まえると、売上だけ見ている訳でも、読者を軽視している訳でもなく、作品や読者のことを考えてくださっているのが伝わってきます。
しかし、まだ紙が重視される向きはあると思うので、電子の売上もいち早く反映させられるような仕組みが整うことを願います。
漫画家の意見は
続いて、漫画家側からはヒロユキ先生の意見をご紹介。インタビューで、商業漫画家なのに同人誌を描く理由などを赤裸々に語ってくださっています。
気になる「電子と紙、どっちで買う方が作者のためになる?」というテーマについては、「個人的にはどちらでも、読者が好きな方で買ってくれたらうれしいです」との回答。
作者側からどちらでも嬉しいとの意見を聞けたのは、読者側としても嬉しい。
ただ、電子書籍は数字が上がってくるのが遅く、打ち切りを決める場合は紙のほうが優先されることは確かにあるとのこと。
数多くの電子書籍販売サイトが勃興するなか、それらを一挙にまとめるのは至難の業なのかもしれません。
いつか技術や仕組みが整い、紙と電子が同等で見られる日が来るのを信じています。
紙と電子書籍、どっちを買うべき?
結局、どちらを買うかどうかは自分の好きなように決めて良いと思うんですよね。
好きな作品が打ち切りの危機で、作者や編集者がどうしても紙の本を買ってほしいと望んでいる場合は、応援する意味も込めて、紙を買う場合もあるでしょう。
まだ紙の実績が優先される傾向があるとはいえ、電子がまったく無視されることもないはず。
もしかしたら、打ち切りになった作品が電子書籍でめちゃくちゃ売れれば、何かしらの形で復活するかもしれない。
きっと、複数の販売サイトの実績がより早く出るようになれば、悲劇の打ち切りで終わる作品が一つでも減るに違いない。
作品を応援するという文脈だと、単行本を買う以外だと友人に薦めたり、Twitterでつぶやいたりするのも効果的かと。
作品のどこが好きなのか、どこが面白かったのかを伝えていくこと。
特に、Twitterは趣味嗜好が近い人とつながりやすいので、もしかしたらフォロワーさんが興味を持ってくれるかもしれない。実際に手にとってくれるかもしれない。
紙もしくは電子で買って、売上に直接貢献するのはもちろん、認知を広げていくのも、作品を応援する一つの手段です。
これからも作品を売り上げの面と、口コミの面の両方で応援していきたいと、改めて感じる次第です。